伝・薬師三尊石仏

伝・薬師三尊石仏(重文)
伝・薬師三尊石仏(重文)

本尊は、白鳳時代(644年〜710)に製作された薬師三尊であると伝えられており、わが国では最も古い石彫りの三尊仏として『国の重要文化財』に指定されています。三尊を刻んだ石版の大きさは、高さ1.18m、幅1.25m、厚さ約34cmで、丸みをおびた安産岩(諸説あり)に彫刻されています。中尊は方形の台座に腰掛けた如来形で、頭上に天蓋が描かれています。背後に頭光と背もたれが表示され両脇侍は合掌して立ち、頭光が描かれています。三尊とも薄い法衣を通して内部の肉体の起伏がよく現れており、布の質感も巧みに描かれています。作られたときは彩色されていたらしく、そのあとが像の唇と着衣にわずかに残っていて唇に紅をさした美しい石仏です。

石仏の願主は女流万葉歌人・額田王(天武天皇の妃)で額田王の念持仏として作られたのではないかとの説もありますが定かではありません。造型は、長谷寺の銅盤法華説相図中の三尊仏とよく似ていると言われている。

晩年の川端康成氏がこの石仏を見て、『ほのぼのとした暖かいものがある、美少女といった感じでもあろうか』と言われたそうです。